荷待ち・荷役時間をどう減らすか――現場分析から始める5段階改善
結論:時間を「分けて測り」、サプライチェーン全体で改善を回す
荷待ち・荷役時間の削減は、トラックの到着時刻だけを管理しても進みません。待機、荷役、検品、伝票処理、構内移動のどこで時間が発生しているかを分けて把握し、発荷主・着荷主・倉庫・運送事業者が同じ事実を基に改善することが出発点です。設備やシステムの導入は有効な選択肢ですが、現場の制約と原因に適合しなければ効果は定着しません。
物流効率化法では、荷主と物流事業者に、積載効率の向上、荷待ち時間の短縮、荷役等時間の短縮に取り組む努力義務が課されています。2026年度からは、一定規模以上の特定事業者に中長期計画・定期報告等も求められます。[1] [2] 本稿では、荷主だけでなく物流事業者を含むサプライチェーン企業が、法令・公式ガイドラインを実務に落とす5段階を示します。
制度と現状を、改善の共通言語にする
ここでいう荷待ち時間は、ドライバーが集貨・配達場所またはその周辺で、荷主の都合により受渡しのために待機した時間です。荷役等時間は、荷積み・荷卸しだけでなく、検品、荷造り、入出庫、仕分け、ラベル貼り、荷主作業への立会いなど、運転に附帯する業務の時間を含みます。[3] 門外待機を記録から漏らさず、両者を原則として別々に計測することが重要です。[4]
政府の基本方針では、トラックドライバー1人当たり年間125時間の拘束時間短縮に向け、1運行の荷待ち・荷役等時間を2時間以内、1回の受渡しごとを1時間以内とする目標が示されています。[2] これは個々の現場の事情を無視した一律の解ではなく、改善の優先順位を議論するための基準になります。2025年度の調査では、1運行当たりの平均荷待ち・荷役等時間は2時間2分でした。一方、予約、積込時間の共有、伝票の事前準備が進んだという回答がある一方で、荷待ち5時間超の現場も報告されています。[5] 平均値だけで判断せず、拠点・曜日・時間帯・作業内容別に見る必要があります。
現場から始める5段階改善
| 段階 | 実施すること | 現場で残すべき記録・成果物 | 主な参画者 |
|---|---|---|---|
| 1. ヒアリング | 到着集中、受付、荷役、検品、伝票、構内動線の困りごとと例外処理を聴く | 困りごと一覧、対象便・対象バース、前提条件 | ドライバー、配車、受付、倉庫、荷主の物流・営業・購買 |
| 2. 現場分析 | 到着、受付、バース入場、作業開始・終了、出発を時系列で観察・記録する | 荷待ち/荷役等を分けた実績、時間帯別のばらつき | 現場責任者、物流事業者、改善担当 |
| 3. 改善提案 | 原因ごとに、運用変更・情報連携・荷役方式の候補を比較する | 原因―対策表、対象範囲、実施責任者、検証指標 | 荷主・倉庫・物流事業者の意思決定者 |
| 4. 改善伴走 | 小さく試行し、予約枠、作業人員、発注締切、荷姿などを実運用で調整する | 試行計画、週次レビュー、変更履歴 | 実務担当者と管理者 |
| 5. フィードバック | 結果を共有し、効果・副作用・未解決の例外を次の標準へ反映する | 定例ダッシュボード、標準作業、次期改善テーマ | サプライチェーン企業の関係部門 |
1〜2:ヒアリングを「時刻データ」で確かめる
ヒアリングでは、「いつも混む」という印象をそのまま結論にしません。ドライバー、運行管理者、受付、フォークリフト担当、検品担当、受発注・営業の順に、約束時刻、実到着時刻、受付時刻、荷役開始・終了時刻を突き合わせます。予定外の早着・遅着、欠品、伝票不備、検品差異、バース変更も理由として記録します。到着時刻または時間帯の指定がある場合とない場合では荷待ちの算定が異なるため、予約の有無と指示内容も残します。[3]
全拠点・全便の把握がすぐに難しい場合は、まず貨物量が大きい、または問題が顕在化している拠点と繁忙時間帯を対象にします。特定事業者の定期報告でも、実効性を前提にサンプリングを用いることが認められ、対象施設・期間・運行を明確にする考え方が示されています。[4] 改善活動でも、対象範囲を明示すれば、比較可能な基準線をつくれます。
3:原因に対応した改善案を選ぶ
改善案は「予約システムを入れる」と先に決めず、観察した現象に結び付けます。例えば、特定時間に車両が集中するなら、受渡し日時の分散、受付・予約枠の見直し、到着見込みの共有を検討します。出荷準備が間に合わないなら、受発注の前倒し、出荷情報・伝票の事前共有、庫内作業の平準化が候補です。手積み・手卸しや検品が主因なら、パレットやロールボックスパレット、事前出荷情報、バーコード、作業員・フォークリフトの配置を、荷姿・安全・品質条件と併せて評価します。[6]
国のガイドラインは、当時約3時間だった1運行当たりの荷待ち・荷役作業等を、各荷主の取組で1時間以上短縮して2時間以内とし、達成後は1時間以内を目標に更なる短縮を求めています。[7] ただし、危険物や重量物の安全確認など、短縮を急ぐことで安全や衛生を損なう作業は別に扱うべきです。対策案には、時間だけでなく安全、品質、コスト、他拠点への影響を併記します。
4〜5:伴走とフィードバックで「導入」を「定着」に変える
改善伴走では、対象バース・対象便・実施期間を限定して試行し、週次で実績と例外を確認します。荷主の営業・購買・生産計画、倉庫、物流事業者の配車・運行管理が同席し、予約枠の守られ方、荷役準備、ドライバーへの指示、追加作業の発生を見直します。予約受付システムは、導入自体ではなく、現場の実態を踏まえて荷待ち短縮につながるよう運用することが必要とされています。[6]
フィードバックでは、荷待ちと荷役等を分けた平均だけでなく、1時間以内の受渡しの割合、長時間化した便数と理由、予約時刻との差、再作業の有無を同じ定義で追います。数値が悪化した便は責任追及の材料ではなく、標準化できない条件を見つける手掛かりです。月次で結果を関係者に返し、標準作業、契約・発注条件、次の改善テーマに反映することで、改善は単発施策から経営・現場の共通運用へ変わります。
荷待ち・荷役時間の改善は、輸配送だけの問題ではありません。まず一つの拠点、一つの時間帯から事実を見える化し、サプライチェーン全体で解決可能な原因を選ぶことが、持続する改善への現実的な第一歩です。自社の物流実態の整理、関係者ヒアリング、改善テーマの優先順位付けでお困りの場合は、日本SCM協会への無料相談をご活用ください。

