結論

国土交通省は、日系荷主企業・日系物流事業者等を対象に、「国際物流の多元化・強靱化に向けた実証輸送」の参加者を2026年10月9日(金)必着で公募しています。実証は同年10月から2027年1月を目途とし、日本を発地・着地またはトランジットポイントとする輸送が条件です。1 3

【実務上の解釈】 国際物流BCPの候補ルートを、平時の実貨と共通の評価軸で検証できる機会です。代替ルートの構想のみを持つ企業も、荷主・物流事業者間の調整、貨物確保、比較対象となる既存ルートのデータを直ちに確認し、応募可能性を判断する価値があります。

ニュースの要点

【事実】 対象は日系荷主企業、日系物流事業者等です。荷主が応募する場合は輸送を担う物流事業者等との調整、物流事業者等が応募する場合は貨物の確保または荷主との調整が求められます。共同応募も可能ですが、代表企業の選定が必要です。3

対象となる輸送は、①既に検討したBCPルートのコスト高・所要日数・制度上の制約等を改善する「深化」、②定期運行、複数荷主の共同輸送、複数コンテナ輸送等による既存ルート活用の高度化、③日本をトランジットとするSea & Airなど国際複合輸送ルートの開発、④既存ルートのBCPとなり得る新規性のある代替ルート、の4類型です。1 2

実証では、既存ルートと比較して、輸送コスト、リードタイム、輸送品質、手続き、トレーサビリティ、BCPとしてのリスク、越境時の税関手続き等を検証します。一輸送につき原則100万円、複数コンテナでは2コンテナを上限に200万円を調査協力に係る費用として支出しますが、応募件数が少ない場合は金額を調整する可能性があります。1 3

物流・SCM企業への影響

【事実】 選定では、輸送手段・ルートの新規性や課題検証の必要性に加え、貨種・貨物量・ルートについて関係者間の調整ができていることなどの実現可能性、他の日系企業への展開可能性が総合的に審査されます。3

【実務上の解釈】 応募では「代替輸送を試したい」という提案だけでなく、既存ルートとの比較設計が重要になります。荷主は調達・販売・品質管理部門と、物流事業者は通関、フォワーディング、輸送事業者と連携し、どの区間で費用、時間、品質、手続き上の不確実性が生じるかを説明できる状態にしたいところです。共同輸送や定期運行を考える企業にとっては、単発の緊急対応ではなく、継続利用できる運用モデルを検討する契機にもなります。

今すぐ確認したい3項目

  1. 実貨と実施体制を確保できるか。 応募主体に応じた荷主・物流事業者の調整が済んでいるか、対象期間に動かせる貨物、貨種、量、ルートを特定します。3
  2. 比較の基準値を用意できるか。 既存ルートについて、区間別の輸送コストとリードタイム(滞留時間を含む)、品質条件、書類・通関の実績を整理します。これらは公募要領が掲げる検証項目です。3
  3. 結果公表への対応を確認できるか。 実証は受託者からの再委託を想定し、進捗・結果の報告が求められます。開始時の参加企業名公表、情報共有会合での発表、報告書の公表も予定されているため、守秘・対外広報の扱いを事前に検討します。3

日本SCM協会の視点

【事実】 具体的な検証事項・方法は、輸送手段・ルートの特性を考慮し、国土交通省と参加事業者が協議して決定するとされています。3

【実務上の解釈】 SCMとしては、最安値のルートを一つ選ぶのではなく、供給継続に必要な代替性を可視化する取り組みとして捉えるべきです。調達先、在庫配置、顧客への納入約束、通関書類、温度・衝撃などの品質条件を一つの評価表に結び付ければ、実証後も有事の切替判断に使えるルート・ポートフォリオへ発展させやすくなります。特に輸送品質やトレーサビリティ、地政学・制裁リスクまで評価対象に含まれるため、物流部門だけで完結させず、調達、貿易管理、法務、品質保証を含む横断チームで応募内容を整えることが重要です。3

参考資料

  1. 国土交通省「『国際物流の多元化・強靱化に向けた実証輸送』の公募を開始します」
  2. 国土交通省「【事業概要】国際物流の多元化・強靱化に向けた実証輸送」
  3. 国土交通省「国際物流の多元化・強靱化に向けた実証輸送 公募要領」